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歯ぎしり・食いしばりについて
歯ぎしり・食いしばりとは
「歯ぎしり」というと、一般的には夜中、眠っている時に行う癖として良く知られています。無意識下で、ギリギリと音を立てて歯をすり合わせる行為を指しますが、これは、一緒に寝ている人に迷惑をかけてしまうだけではなく、ご自身の体にも悪影響を及ぼしてしまう危険な行為です。一般的に、人間の噛む力の強さは、自分の体重程度の力と言われておりますが、無意識下で歯ぎしりをしている時にかかる力は、人によってはなんと、1トン以上になるともいわれております。
そのような巨大な力で毎日歯をすり合わせていては、歯や顎に過度の負担がかかり、痛みが出たり歯が割れるといった症状がでてしまうのも当然。歯に過度の負担がかからないよう、歯ぎしりや食いしばりの力から、歯を守ってあげる必要があるのです。
約70%の人がしていると言われる「歯ぎしり」「食いしばり」
多くの方の場合はご自身の歯ぎしりや食いしばりに気が付いていらっしゃらないようです。当院に診察に来られる患者さまの中にも、お口を拝見すると、明らかに歯ぎしりや食いしばりの兆候が見られる患者さまがたくさんいらっしゃいますが、それを指摘すると皆さん「えっ?私、歯ぎしりしてますか?」と驚かれます。無意識下での歯ぎしりや食いしばりは、成人の約70%以上が行っているともいわれておりますが、それを自覚して対処している人はまだまだ少ないように思います。日々、過酷な環境で機能してくれている歯がダメになってしまう前に、なるべく早く症状に気が付いて歯を守ってあげましょう。
ちいさなお子様も、歯ぎしりをします
- 「子供が夜、歯ぎしりをしているんです…」
よく、お子様の歯ぎしりを心配されたお母さまから、このようなご相談を受けることがあります。また小学生ぐらいのお子様が歯ぎしりをしていたら、何か問題があるのではないかと、親としてはとても心配になってしまいますが、ほとんどの場合、お子様の歯ぎしりは心配することはありません。小学生ぐらいの、乳歯と永久歯が混在している時期の場合、どうしても、歯が抜けたり生えてきたりで歯の噛み合せが悪くなってしまうので、歯ぎしりをすることで噛み合せのバランスを調整していると言われております。
つまり、子供の成長過程で、歯ぎしりは必要なものなのです。ですが、歯のすり減り方が激しかったり、永久歯が生えそろった後でも歯ぎしりが続くような場合は、治療が必要な場合もありますので、ご心配な方は一度、ご相談にいたしてください。
歯ぎしり・食いしばりの種類
一言で「歯ぎしり」「食いしばり」と言っても、その歯の合わせ方によっていろいろな種類があります。下記のうち、歯や顎に大きなダメージを与えてしまう傾向があるのが「グラインディング」と「クレンチング」タイプです。特に「クレンチング」は歯へのダメージが最も大きく、最近増加傾向にある症状ですので、気になる方は、まずはご相談にいらしてください。
グラインディング(歯ぎしり)
夜中、寝ている時に起こることが多いもので、一般的に「歯ぎしり」というとこのタイプのものを指します。
症状が進行してしまう前に、早めの対策をすることが必要です。
夜間の歯ぎしりは人間にとって必要な行為?
ほとんどの人は、多かれ少なかれ、夜間に歯ぎしりをしていると言われております。そして、この歯ぎしりという行為は決して悪いことばかりではなく、人間が社会生活を行ううえでとても重要な役割を持つ行為なのです。人間が歯ぎしりをする原因はさまざまですが、その大きな要因として「ストレス」が挙げられます。
本来、動物にとって「噛む」という行為は、相手を攻撃する行為。敵に遭遇するという最大の不安ストレスに対し、攻撃的に噛むという行動を発現することによって、ストレスを発散していると言われています。人間の場合も、社会の中でさまざまなストレスを受けておりますが、ほとんどの場合がその場で発散させることができないため、精神領域にどんどんと蓄積されていきます。
しかしながら、そのようなストレスの蓄積は、生命維持にとって重大な問題につながってしまうため、防衛本能として、睡眠中に歯ぎしりをすることでストレスを発散し健康を維持しているものと考えられているのです。
つまり、歯ぎしりをできないようにしてしまうと、ストレスの発散が正常に行われなくなり、逆に体にさまざまな悪影響を生じさせてしまうことになりかねません。
大切なのは、歯ぎしりしていることに気づき、その力をコントロールし、歯を守ってあげること。
当院では、歯を守るためのマウスピースを作成し、睡眠時に装着していただくことをおススメしております。
クレンチング(食いしばり)
一般的には「食いしばり」や「咬みしめ」と表現されるタイプで、上下の歯をギューッと強い力で噛みこむタイプです。
このタイプの特徴は、夜、寝ている時にもそうですが、昼間でも起こるという事です。
また、ほとんどの場合は音が出ませんので、周りの人も本人も、気が付きにくいタイプと言えるでしょう。
クレンチングをしている人は、頬の筋肉に力が入るため堅く膨らんで見えたり、お口の中に骨隆起と呼ばれる、骨が膨らんでできたコブのようなものがあったりします。
また、歯が割れやすいという方も、このクレンチングタイプの方に多く見られます。
タッピング
上下の歯をぶつけ合って、カチカチと噛み合わせるタイプです。
タッピングは、歯ぎしりのタイプとしては比較的珍しく、歯や顎へのダメージも、グランディングやクレンチングと比べれば、それほど大きくはありません。
寝ていいるときも、起きている時も起こりますが、カチカチと音が鳴りますので、自覚しやすいタイプと言えるでしょう。
歯ぎしり、食いしばりによる悪影響
つめ物が取れやすい
強い力で断続的に歯を揺さぶることで、歯とつめ物を接着しているセメントが少しづつ破壊され、つめ物が外れてしまうことがあります。
つめ物が取れてしまう原因としては、他にも、接着がしっかりできていなかった場合や、つめ物と歯の間が虫歯になってしまった場合なども挙げられますが、取れた詰め物の下が虫歯にもなっておらず、かつ、何度詰め直しても頻繁につめ物が外れてしまうような場合は、歯ぎしりが原因である場合が多いです。
キレイに外れた場合はそのまま詰め直すこともできますが、調整のために歯を削らなくてはいけないこともありますので、その分、歯はダメージを受けてしまいます。また、頻繁に歯科医院に通わなくてはいけない状態は、時間的にも費用的にも負担が大きくなってしまいますので、根本的な改善が必要となります。
歯の根元が削れて知覚過敏を起こすくさび型欠損(WSD)
歯ぎしりにより強い力が加わると、歯と歯茎の境目に部分に応力が集中し、歯の根元がくさび型に欠けた状態(くさび型欠損)になります。
エナメル質が破壊されてしまいますので、象牙質が剥き出しになり、しみやすく、また虫歯にもなりやすくなります。対処法としては、プラスチックで欠けた部分を埋めるという方法もありますが、歯ぎしりの力が強いとまたすぐに外れてしまうため、きわめて短期的な対策にしかなりません。
放置していると、神経が死んでしまうこともありますので早めの対策が必要です。
歯を支えている骨が溶け、歯周病になりやすくなる
歯が割れてしまう(歯根破折)
特に、神経をとってしまった歯の場合、歯ぎしりの強い力に耐え切れずに歯の根っこの部分まで割れてしまうことがあります。
歯が割れてしまうと、噛むたびに痛みを感じたり、歯茎がはれたり、上の奥歯の場合は頭痛を引き起こしたりと日常生活にも大きな支障が出てきます。ほとんどの場合が抜歯をすることになってしまいますので、そうなってしまう前の対策が重要になります。
歯ぎしり、食いしばりの治療
『咬合圧測定器』による検査
春日部は豊春駅目の前の歯医者である当院では、「歯ぎしり」「食いしばり」のボトックス治療に注力しています。
咬合圧測定器を使用することで、噛む力(咬合力)を可視化し、歯ぎしり・食いしばりの改善を客観的に把握することができます。患者さんへの負担も少なく、簡便・短時間で測定することができます。
春日部、豊春駅前の当院では、より、精密な「歯ぎしり」「食いしばり」のボトックス治療を行い、治療成果を向上させるために、この「咬合圧測定器」を導入しています。
『ボトックス注射』による治療
ボトックス治療とは、ボツリヌス菌から抽出されるたんぱく質の一種を過度に緊張している筋肉に注射することで、一時的に緊張をほぐす治療法です。歯ぎしりや食いしばり、顎関節症などの症状を抱えている患者さまは、咬筋(主に食べ物を噛む時になどに使われる筋肉)が過度に緊張し、必要以上に発達している傾向があります。
咬筋の肥大は、ほおっておくと顎の痛みや血行不良、ストレス、頭痛、肩こり、エラ張り、むくみなど、さまざまなトラブルを引き起こしてしまいます。
そのため、ボトックス注射により緊張をほぐし、症状を緩和してあげることが有効となります。また、ボトックスは、脳が筋肉に運動することを命令する「神経伝達物質(アセチルコリン)」の働きを阻止する働きもあります。睡眠時に歯ぎしりをしている方の場合、この神経伝達物質が無意識のうちに働いてしまっている傾向があるため、ボトックス注射によりその働きを抑制することで歯ぎしりを防止することが出来ます。(※ボトックス注射とは、ボツリヌストキシン製剤の商品名です。一般的にボトックスという名称が普及しているため、患者さまに解りやすいようボトックスという名称を使わせていただいております。)
『D function(ディーファンクション・歯科用両側性筋電気刺激装置)』
当院では「D function(ディーファンクション・歯科用両側性筋電気刺激装置)」を導入しています。顎関節や咬筋などに電気刺激を与えることで、頭頸部の疼痛緩和・筋肉の弛緩などが期待できます。皮膚への刺激が少ないので、快適にご使用いただけます。その他、傷ついた組織の修復を早め治癒を促進したり、筋のバランス調整も可能です。粘着パットは患者様ごとに使用なので衛生的で、「保険適用」でご利用できます。当院では「酸素ルーム」を完備しており、酸素ルームとの併用もおススメしております。
※筋肉からきてる顎関節症(1型)のケースで使用します。
「D function(ディーファンクション・歯科用両側性筋電気刺激装置)」は、デンタルダイヤモンドにも掲載されました。
『DENTAL DIAMOND 2019年12月号』 ~ 臨床に役立つすぐれモノ 歯科用両側性筋電気刺激装置「D-function」
安陪 晋(徳島大学大学院医歯薬学研究部 口腔科学部門臨床歯学系 総合診療歯科学分野)
『グラインドケア』による睡眠中の歯ぎしり低減
当院では「グラインドケア」を導入しています。グラインドケアの使用によって、睡眠中の歯ぎしりを低減可能です。
睡眠時の歯ぎしりをコントロール可能
グラインドケアは、睡眠中の歯ぎしりの検査・防止装置です。
グラインドケアは睡眠時のブラキシズムを「見える化」してコントロールします。睡眠時の歯ぎしりやくいしばりの回数を記録し、なおかつ、歯ぎしりを検知すると、弱い電気刺激を発生して、歯ぎしりを低減します。
小型のセンサーをこめかみにセット
グラインドケアは小型のセンサーをこめかみにセットして就寝するだけで使用できます。
専用のアプリと連動し、歯ぎしりを記録し、スマホで確認できます。
歯ぎしりの状態にあわせて、低周波で顎の筋肉をリラックスさせることで歯ぎしりをコントロールします。
睡眠時の歯ぎしりを50%低減
グラインドケア使用群と未使用群で、3週間、6週間で比較したところ、グラインドケア使用群はグラインディング回数が50%低減していました。(研究データ)
基本的に睡眠を妨げない
研究データによると、グラインドケア使用群と未使用群を比較したところ、睡眠時の微小覚醒回数に有意差はありませんでした。
つまりグラインドケアの使用は、基本的に睡眠の妨げになりません。
『スプリント(ナイトガード)』による治療
当院では、歯ぎしりや食いしばりによる強い力から歯を守るために、就寝時に、歯ぎしり対策用のマウスピースを装着することをおススメしております。歯ぎしり対策用のマウスピースには市販されてるものもありますが、使い方によっては、噛み合わせや歯並びを悪化させてしまう危険性もありますので、歯科医院にてご自身の歯にぴったり合ったものを作成してもらう方が良いでしょう。
保険適用の範囲内で作成できるタイプのものもありますので、3割負担の方でしたら5,000円程度で作成することができます。
『噛み合わせ』の調整
歯ぎしりや食いしばりが起こる原因として、噛み合わせの悪さが関係している場合もあります。そのような場合は、噛み合わせを調整してあげることで、歯ぎしりを緩和させることが可能です。
噛み合わせが原因である場合は、歯ぎしりだけではなく、頭痛や肩こり、腰痛など、他の全身症状も併発している場合が多いです。そういえば、、と心あたりがある方は、まずはご相談にいらしてください。
『咀嚼筋マッサージ』
歯ぎしり、食いしばりがある方は、顎や頬などお口周りの筋肉がとても緊張しています。
その筋肉の緊張が、頭痛や肩こりを引き起こしたりする場合もありますので、その筋肉の緊張を緩和させるためにお口の周りのマッサージをし、リラックスさせてあげることも有効です。咀嚼筋マッサージは、コリ固まってしまった頬や顎の筋肉をほぐすことでリンパの流れを促し、お顔のゆがみも改善していくマッサージです。
食いしばりのある方はもちろん、普段からパソコンに長時間向かっている人や目を駆使する仕事をされている方などにも有効ですので、ご興味のある方はお気軽にスタッフまでお声がけください。
関連痛における疼痛発生源と疼痛感受部位との相互関係
人間の体はさまざまな部位が相互に繋がっております。
このことにより、「関連痛」といい、例えば咬筋肥大により肩こりが出たりすることもあります。咬筋肥大による肩凝りは改善いたします。
つまり、この関連痛に関しては、口腔領域が原因のものについては、治療効果が見込めますが、口腔領域以外が原因のものについては、当院は医科の病院やクリニックと連携しており、ご紹介させていただいております。
また、主訴が額顔面口腔領域のものについては治療可能ですが、それ以外の部分の治療については、同様に、提携している医科の病院やクリニックをご紹介させていただいております。
側頭筋 | 咬筋 | 外側翼突筋 | 内側翼突筋 | 胸鎖乳突筋 | 顎二腹筋 | 僧帽筋 | |
耳痛 | |||||||
顎角部 | |||||||
上顎歯痛 | |||||||
下顎歯痛 | |||||||
顎関節痛 | |||||||
頭痛 | |||||||
耳鳴 | |||||||
耳閉感 |